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Health, justice and a good life

地域での診療とヘルスポリシー研究、政策実践を横断中。

家庭医療や総合診療の戦略

まとめず、つれづれに。

以前、非常に優秀な戦略コンサルタントの方に

「家庭医療っていうのは、戦略的に負けるコンテンツなのだ」という主旨のお話しを伺ったことがある。「総合的」や「包括的」の部分が広報やプロジェクト組成しにくかったり、経営的に利益を出しにくいかつ政策依存的(診療報酬の動向に左右されやすい…)な収益構造だったり、日頃悩んでいるところをさらっと指摘されてしまったと直感的に感じたのを覚えている。もんじゃ焼きをつつきながらの話しだったので、その後銀座のおねえさんや新宿の飲み屋の話しにながれてしまい、詳細を聞きそびれたのだが、ずっとそのことが頭にひっかかっている。

家庭医側からすると、診断と治療を基本としながら、予防もやるし地域包括も関わる(主役は地域ではたらくの保健福祉の専門家達だけども)、必要な検査や病院紹介もアレンジして、もどってこられたらまた継続的に関わる。ケアもキュアもどっちもつかって、関わる方の健康や生活の支援に妥協しない、年齢や性別、疾病で分けず、どういった健康問題に関しても自分のできる範囲で対応する、外来で間口を大きくとり、訪問診療というオプションも準備している、という感じだ。

医療や健康が人生の中心にあるのは本意ではない、しかし不注意や無知、構造の不備や支援のミスマッチなどで苦痛や苦難を被るのはごめん願いたい、そういう思いだ。あっ、これは思いなのだな。

最近は「予防医学専門家」や「地域・コミュニティ専門家」といった新しい”専門家”がでてきているが、そのあたりもぐっと自分の診療圏にとどまって、自分の診療を積み重ねていく家庭医とちょっと違って、面白くみている。予防の範囲からはみ出ようと、地域と関係なくても、家庭医・総合診療医はしつこくあきらめないけれど。地味すぎる。

現在診療している地域では、医療機関が非常に非常にたくさんあるので、患者さん達も自由に?使ってくださり、

「午前中に他の診療所にかかったのだけど、これどう思う?」(2児の母)

といった、時々当院にかかる方の電話相談が診療時間内にくる、ということがよくある。クリニック事務の方も非常に優秀なので、適宜情報収集して、必要ならさらっとこちらに回してくれる。英国なんかは医師による電話相談の時間を設けたりしているみたいだけれども、まあ、担当させていただいている患者さんの範囲では、診療時間中でも十分に対応できる。そういうフリースタイルな感じが、日本の家庭医療・総合診療の現状だし、いいところだと思う。一方で、例えばまだ2週間毎の受診を全ての患者さんに強いる診療所もあったりして、経営者的発想としては合理的なのかもしれないが、優先順位が違っていることもよく聞くのが負の側面か。

パッケージとして出しにくい家庭医療や総合診療の戦略だけれども、最近所属する医療法人に「家庭医療専門医」や「認定医」が複数就職されていて、ああ、家庭医療・総合診療人材の育成を粛々とすすめていた先人達の戦略が、粛々と効果をあげていることを感じている。合理的な経営戦略にはのらないけれど、気がついたら周囲が家庭医だらけな人材戦略が、時間の力もかりながら最後には成果をあげていくとみている。これを見据えて10年以上も活動している方々を非常に尊敬している。