Health, justice, and a good life

地域での診療とヘルスポリシー研究、政策実践を横断中。

家庭医のひとり診療所は都会で存続可能か?

前回の投稿であった「はじめてロンドンで登録した小さな家庭医診療所」は、インペリアルカレッジから歩いて通える距離のアパートに住み始めた時に登録したところです。インターネットで検索して、一番近いクリニックに登録したくて、ひとまず登録ってなんだと歩いて様子を見に行きました。

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こんな住宅のひとつがクリニックでした。

扉を開けると簡素な机に座った婦人が受付をしてくれました。普段着の素敵な、近くに住むお姉さんの感じで、さあお入りなさい、と。登録したい旨と、留学生なのでこれからどうすればよいのか分からないということを、たどたどしく英単語をつなげた言葉で伝えると、ああそうよね、新学期の季節だね、と飾らない言葉で緊張をほぐしてくれる。いくつかの必要な書類について教えてくれて、その日は終了。待合室と呼ぶべき中の空間は、古いソファと歩くときしむ床、その後何度も他の場所でみるよくある住居の居間のような空間でした。後日訪れて診察室にもおじゃまする。簡素なベッドと見慣れた必要最小限の診察道具とともに、リラックスした様子の家庭医が座っている。概念的に語られるゲートキーパーやゲートオープナーや、レントゲンや内視鏡やCTがクリニックにないことや、待ち時間が長いことなんかはどうでもよくなり、きちんとトレーニングされた家庭医が落ち着いて存在して、どんな健康問題でも相談してね、といってくれることに圧倒的な存在感と安心を感じたのでした。これはいいね、と。

結局、家族の妊娠で助産師さんを紹介してもらった以外には、そこのクリニックにお世話になることはありませんでしたが(子供が生まれてからは、引っ越し先で本当にたくさんの家庭医(GP)にお世話になりました。。)、その「小さな家庭医診療所」は私の頭にのこり、今回の開業のモデルとなっています。

家庭医ひとりのキャパシティで、近隣の方へ家庭医療診療を行う。患者さんがアクセスしやすい道路沿いの1階に扉を開けて、どの年代の患者さんも来院できるように外来を開けておく。まずは診療内容をきちんと世界標準に定め、提供できる診療体制整備を行う。継続して運営可能な体制を整える。新しいことや余計なことはせず、継続して診療して長期的な安心を提供する。単独では成立しないのが家庭医療クリニックであり、近隣の医療機関や医療専門職・介護専門職・福祉専門職や行政機関と連携し、健康問題解決や日常生活支援を提供する。来院できない方へは訪問診療の選択肢もある。乳児健診や予防接種から生活習慣病管理、よくある疾患の診断や管理とともに鑑別診断が困難な例へのアプローチにも情熱を燃やす。アレルギー診療や感染症診療も実施し、診療科横断的な診療をして、認知症在宅医療や在宅緩和ケアまで提供する。トレンドやイノベーションは柔軟に採用しながらも、根幹はぶれずに実践するために、ひとりでやってみたいし、国内外でも実践できている先例はある。

医療提供サイドの覚悟と準備はできました。さて、皆さんにどのように使って頂けるかが次の課題です。クリニックでお待ちしております。