迂闊だった。急に焦り始めている。
いつのまにか、周囲にいらっしゃることが当たり前だった存在が、もうすっかり貴重な存在になっていることに、臨床からすこし離れているためようやく気づく。
どこかで読んだ文章のように、「もう既に『私は(戦争を)覚えている』といえる人はほぼ誰もいなくなった、ということが真実である。私たち大多数にとって戦争は経験した過去ではなく、歴史なのだ」(原文はFreiという方の、異なった題材のもののようだ)。
僕にとって外来は、戦争の話しを聞くことがひとつの日常だった。焦る。永遠に失ってしまう前に、もっと覚えている経験された過去を聞きたい。時間がない。